夕日が照らす「成田信用金庫」新成田支店の休憩室。
今夜は東大卒の秋穂の支店での送別会であった。
秋穂との最後の夜、支店長の二階堂はホテルに連れ込もうと部下の梶田に昇進を餌にキューピット役に徹するよう計画を図る。
梶田が2日前に思いついた作戦は「強盗に襲われた秋穂さんを支店長が無事に救出し、彼女のハートを奪取してしまおう大作戦!……2008年、冬!」飛んだ猿芝居……。
しかし梶田は友人に頭を下げ劇団ひまわりのエキストラを呼んだり
青学卒の営業中カウンターでピザ屋に注文の電話をしてしまう心愛(ここあ)の彼氏を強盗役で呼んでしまうくらいの計画性を発揮。
そんな中、目出し帽を被った男女2人組の銀行強盗が店内を彷徨っていた。
男の目的は大金を奪取し精神病の妹をイギリスに連れて行くこと。
女(春華)の目的はこの支店の1人に復讐をすること。
出会って間もない強盗2組が行員達に銃口を向けるが、ずれてるシチュエーションのせいで銀行強盗は猿芝居だと思われてしまう。
必死になればなるほど、怖くなればなるほど劇団員だと思われて行く。
そんな中、倒産間際の下請け工場「安田製作所」の安田工場長がが融資を求めに乱入して来る。
二階堂の妻、貴子も休憩室に乱入。
いつの間にかドラマは二階堂の浮気相手探しになってしまう。
男が本物の拳銃を発砲。そして春華は姉の秋穂に拳銃を向け、目だし帽を脱ぎ捨てた。
秋穂が探していた行方不明の実の妹だった……。
休憩室という空間で巻き起こる事件の数々と人間関係の繋がりを見せて行くクライム・ヒューマンコメディ。
いたって健康なんですが、自分が描いた作品の中で一番病んでる作品だと思います。
狭い休憩室で登場人物全員が普段言えなかった事を言い合う、お話ですから。
ストレスを抱えた現代人が拳銃片手に好きなことを言い合ったら、誰が誰を撃つのだろ?
「案外、言ってみたら悩んでた事が一気に消えるんじゃねーの!? 伝わなかったら引き金、引いちゃいなよ。」
現実は拳銃で撃たれるよりも、後に傷が残る言葉が飛び交ってる。隣りの家から聞こえて来る夫婦喧嘩なんてひどいもんですよ。皿が飛び交う音が聞こえれば笑えるのに。
だからこの作品に出て来る登場人物は拳銃片手に痛快で健康的だ。
G◎LDEN BALL CRUSH記念すべき第1弾公演という事もあって、この興行のためにそんな事を頭の片隅に置きつつ書きました。可笑しなシチュエーションで人間関係を繋げていくのが、とにかく面白かった。
この脚本の最後に「秋穂」というキャラが「大切なものは大切だって素直に言える気持ちを持ちなさい」っていう台詞があるんだけど、僕にとって「大切なもの」って何だろうと考えてみたんです。
「舞台」「観に来てくれるお客様」「シュークリーム」……「描いた夢」?
なかざわ氏との最初の打ち合わせで、彼が示したのは「指名手配」「色あせた感じ」「ソウルっぽさ」のあるデザインでした。
ですが彼からストーリーとコンセプトを聞き、打ち合わせの中でカメラの映像とモニタという言葉が出てきて、このデザインを提案しました。
さらに「お金の集まるところに人間が交差する」「(今回の話は)ひとつの内容を追っていない」というなかざわ氏の言葉から、
たくさんのモニタをひとりの『男』が見ているというシチュエーションを提案しました。
狭い空間で監視カメラに映った外の世界を見ている『男』。そこに映る、登場人物を表現している写真と、台詞に登場する言葉を表す写真。
これら断片的に切り取られた写真が、ストーリー上でどうやって絡むのか想像していただければと思っています。
某映画をヒントにしているのは分かりやすいほど、分かってしまうと思いますが……。